Giclée

Giclée

ジクレーは、版画技法の一つです。
私たちにとってそれは、
作品と向き合い、その魅力を正確に伝える手段でもあります。

ここではジクレーとは何か。
その背景や価値、考え方について、私たちなりの視点でお伝えします。


最近、複製画や複製版画の通販や展示会でよく見聞きするようになったジクレー版画という言葉があります。ジクレー或いはジークレーの名称は、フランス語のGiclée(吹き付けるの意)から来る言葉です。弊社ではジクレーを統一した呼び名と致します。専用の高画質、高解像度のプリンターで制作する印刷技術のことです。先駆者であるヒューレットパッカード社が名付け親です。ヒューレットパッカード社は熱を利用してインクを噴射するサーマル方式、ジクレーに追随して開発されたのがエプソン社ピエゾグラフです。電圧(ピエゾ素子)を利用してインクを噴射する方式を採用し、ピエゾグラフと呼んでいます。あとキヤノン社イメージプログラフと言うように、それぞれの会社が独自の異なるネーミングで開発しています。しかし、商標登録をしていないため、その名前は自由に使用することができます。一般的にはアートの分野としてはジークレー或いはジクレーの名前を使用される事が多く、その中でもエプソンの機種で制作されたものはピエゾグラフと言う名前で表示される事が多いです。

ヒューレットパッカード社のジクレーエプソン社のピエゾグラフ。その優劣については一長一短があります。ヒューレットパッカード社のサーマル方式は熱を利用するため、熱が一定でない場合もあり不安定な場合があります。ピエゾ素子を利用するピエゾグラフの場合は、電圧による不安定さがある場合があります。しかし、いずれも微妙な差異ですので優劣はつけがたいと言えるでしょう。ヒューレットパッカード社のジクレーは、当初はドラム式で制作され、ドラムが回転しノズルが左右に移動してインクを噴出していました。しかし、この方法ではサイズが限られるため改良され現在の大判プリンターになったのです。各社ともにプリンターの中でも最上級機種として開発にしのぎを削り、車で言えばF1のように競っています。いまだにその覇権争いは続いています。

アートの分野で使用されるためには発色と保存性が重要になります。何万円と言う価格で取引されるためには避ける事はできません。そこでプリンターの開発と共にインクや紙の開発も同時に進んでいます。インクは、当初は染料インクを使用していたため退色が早く、数カ月で色が薄くなると言う状況でした。その後、顔料インクが開発され現在に至っています。染料インクは粒子が小さいためノズルが詰まりにくいのですが、顔料インクだと粒子が大きく、粘着性があるためノズルが詰まりやすいと言う欠陥がありました。しかし、その後開発が進み、耐光性、耐オゾン性についてもかなり優秀になっています。

ここで触れなければならないのは、水性インクと溶剤系インクとの違いです。溶剤系のインクの場合、主に屋外に掲示する看板などに使用されます。そのためプリンターもそれに対応したものになります。アートの分野では、溶剤系のインクよりもさらに繊細な発色の顔料を水に溶かした水性インクを使用しています。紙の表層部にインクを受容する特殊な加工がされていて、着色と同時にインクの粒子を包み込むことで紫外線やオゾンから守っています。そのためにインクの粒子がむき出しの状態より保存性が高くなります。メーカーとしては、創業440年にもなるドイツの製紙メーカーであるハーネミューレ(Hahnemuhle)が世界のシェアのトップとなっています。

ジクレーの技術を利用して制作する限定されたアートに特化した印刷物です。従来は、リトグラフ、シルクスクリーン、エッチングなど実際に版を複数制作し、版を重ねて制作しました。それらに代わって、言わばデジタルで制作された版により版画専用紙に印刷された限定制作物がジクレー版画です。現代における広義の版画と言えるでしょう。

ジクレー版画は、完成したデジタルデータをプリンターで一枚ずつ制作しますので、リトグラフやシルクスクリーンのように限定数をまとめて刷る必要はありません。必要に応じて必要な枚数を刷る事ができるのが大きなメリットです。デメリットは、アート作品としてようやく認証されて来たばかりで認知度がリトグラフやシルクスクリーンほどではない事です。またプリンターを使用することで、だれでも簡単に制作できると誤解されがちです。制作にあたっては、作家や著作権者が介在しますので、これまでの版画と同じように厳しくチェックされます。最後に作家がサインするなど認証されたものだけが商品化されます。CGアーティストも増えている今日、色の保存性も優れて来ており、アートの分野では必要不可欠な技術となって来ています。

現実的に版を制作しインクを付着されて制作するリトグラフやシルクスクリーンそして木版画。これらの技法は摺り師が原画をもとに版を制作します。手作りのため、摺り師の技術が重要となります。原画を版に写し取る際に摺り師の癖が出ることがあります。パリにあったムルロー工房では、摺り師の腕前が買われピカソやルオー、シャガールなどの巨匠がこぞって制作を任せました。歴史的に版画として活用されて来たこれらの作品は美術館にも展示されていることから、巨匠たちの版画として価値付けられています。有力な画商アンブロワーズ・ボラールによって制作されたピカソやルオーなどのボラール版などは有名です。さらに版画家で摺り師のジャック・ヴィヨンによって作られたジャック・ヴィヨン版のように摺り師が独自に著名作家に代わって制作することもありました。しかし、写真技術が進むと写真製版も用い安易に制作されるようになり、オフセット印刷のように粗製乱造される事も増えました。


近年におけるジクレーの登場と必要性、それはコンピュータと言う新たなツールの登場に起因します。それとフォトショップなどの画像編集ツールの登場もあります。CG作家も増えつつある今日、PCからの出力によってリアルに作品を見せる事ができます。オンデマンドで制作することでビジネスとして有効と言う経済的な理由もあります。売れるかどうかわからないにもかかわらず100枚、200枚を制作し保管するというリスクから解放されたのです。これは革命的な事と言えるでしょう。作家が承認すれば、アート作品として通用すると言わざるを得ません。では、どちらが価値があるか?と言う事になると手間暇のかかるリトグラフとシルクスクリーンの方が製造原価が高い事、歴史が長いということから価値は高いと言えるかもしれません。しかし退色についてはリトグラフやシルクスクリーンにおいても同様な懸念があります。リトグラフは数年飾っておくと当然ながら退色します。むしろジクレーの方が保存性は良いと言えます。《結論》歴史的に見ても手作りのリトグラフやシルクスクリーンの方がコンピュータで制作するジクレーより価値は高いと言うのが一般的かもしれません。しかしながらアートの多様化している今日、作家が認める事で、時代とともにその価値観は徐々に変わって来ていると言うのも事実です。

画家が作品として世に出す。それを手助けするのが従来の版画の摺り師の役割がオペレーターです。コンピュータで制作するのでスイッチひとつで簡単にできあがる、と言う訳ではありません。すぐに出てくるいわゆるコピー機とは全く異質なものです。色彩感覚やフォトショップの高い操作技術が当然要求されます。さらに作品に合った紙の選択も重要です。弊社は、画家の指示に従って可能な限り表現を追求します。原画と同様に、或いは原画とは異なる風合いにすることも可能です。弊社のオペレーターは、画家の納得行くまで画家とともに目標に向かって追及して参ります。

プリンターの個体差を認識することは大変重要です。弊社では新旧10台のB全以上を刷れる大判プリンターを使用していますが、古いプリンターで制作した作品を新しいプリンターで同じデータを刷っても同じものにはなりません。またプリンターそれぞれが個体差があります。同じメーカーの同じ機種でも異なります。それはプリンターヘッドの個体差でもあります。さらにインクも進化しています。弊社では、お客様のデータを最低5年間は保管していますので、その間は同じ製品を提供します。そのためにお客様個別のカルテを作成し完成品の縮小版や出力の際の設定情報を保管しています。新しいヘッドや機種変更の際に参照して同じ色味にしてお渡しします。いわゆる出力センターとの違いはここにもあります。エディションの途中で色味が変わっては信用問題です。常に同じ完成品をお渡しします。今日刷ったものと同じ品質のものを5年後にもお渡しできるという事です。お客様に代わってストックしているのと同じです。お客様は必要最小限制作すれば良いという事になります。

お客様のジクレー制作のデータや刷り見本は、5年間、お客様ごとに管理・保管しています。現在約1500名様のデータをカルテとして保管しています。いつでも1枚から追加刷りが可能です。その際、費用は発生いたしません。いつ刷り増しをしても、同じ品質でお渡しできる体制を整えています



多くの制作は、初回の一枚からはじまり、追加刷りや継続的な制作へとつながっていきます。
データを長期保存している理由も、そこにあります。


はじめて版画制作をご検討の方も、どうぞ安心してご相談ください。

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